Microsoft Flight Simulator 2024に、2024年最後の大型アップデート「Sim Update 4(SU4)」が配信されました。
9月から続いていた長いベータテストを経て、ついに正式リリースとなった今回のアップデート。前回のSim Update 3で多くのユーザーから「重くなった」という声が上がっていたパフォーマンス問題に、遂に本格的なメスが入りました。
実際に検証したところ、重いと評判だったA320NEOで驚異の+20FPS超えを記録。着陸時のカクつきもほぼ解消され、別物と言えるほどの改善が確認できました。
パフォーマンス改善だけではありません。日本の千葉・幕張を舞台にしたレッドブルエアレースの追加、超音速機Boom XB-1の実装、長らく問題だった日本語表示の改善など、注目の新要素も盛りだくさんです。
この記事では、SU4で何が変わったのか、どれだけ快適になったのか、そして今後のアップデート予定まで、詳しく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
パフォーマンス改善が最大の目玉
CPUとVRAMの最適化で別次元の快適さに
今回のSim Update 4における最大のテーマは、前回のSU3で悪化したパフォーマンスの改善です。
特にA320NEOのような重い機体では、その効果が顕著に現れました。検証環境として、以下の条件で比較テストを実施しています。
検証環境
- CPU: Ryzen 9 7950X3D
- GPU: RTX 4080
- メモリ: 64GB
- グラフィック設定: Ultra設定、フルHD、DLSS有効(バランス)
- 機体: デフォルトA320NEO
- 空港: 羽田空港(ワールドアップデート20適用後)
驚異のFPS向上を実測
空港でのスポーン時、SU3では55FPSと非常に低く、カクつきも確認できる状態でした。
これがSU4では70FPSを超える数値を記録。実に+15FPS以上の改善です。
さらに注目すべきは着陸時のパフォーマンス。全体を通して平均+25FPSもの改善が見られ、特に着陸直前のカクつきがほぼ解消されました。
以前は着陸前の重要な局面でフレームレートが落ち込み、スムーズな着陸操作が困難でしたが、SU4ではブレーキ作動までストレスフリーな飛行が実現しています。
カクつきは完全には消えていない
ただし、完璧とは言えません。
ブレーキで停止する際や、視点を急激に動かした時には、まだ若干のカクつきが残っています。それでも、通常のフライト中はほとんどカクつきを感じることがなくなり、遊べるレベルに到達したと言えるでしょう。
海外ユーザーの報告によると、Xboxでも同様のパフォーマンス改善が確認されているとのこと。プラットフォームを問わず、多くのユーザーが恩恵を受けられるアップデートになりました。
新コンテンツ「レッドブルエアレース」が熱い
空のF1が自宅で楽しめる
SU4で追加された目玉コンテンツの一つが、「レッドブルエアレース」モードです。
PS5版では既にローンチ時から収録されていましたが、PC版にもついに実装されました。
レッドブルエアレースは、2003年から2019年まで開催されていた曲技飛行パイロットによる世界選手権。最高時速370km、最大10Gという過酷な条件下で繰り広げられる空中タイムトライアルは、「空のF1」とも称されていました。
日本の千葉・幕張コースも収録
世界各地の名だたるコースから厳選された6つが実装されており、その中に日本の千葉・幕張コースが含まれています。
2015年から2019年まで幕張海浜公園で実際に開催されたコースを、自分の選んだ機体で再現できるのです。
ワールドアップデート20で幕張周辺のマリンスタジアム付近に手作りのランドマークが多数追加されていたのは、このモードのための準備だったようですね。レッドブルエアレースを楽しむなら、ワールドアップデート20の導入もおすすめです。
4段階の難易度設定
難易度は初級、中級、エキスパート、現実世界の4段階。
難易度が上がるにつれてペナルティやルールが厳格になり、最高難度の「現実世界」では実際のレッドブルエアレースと同じルールが完全適用されます。
具体的には、1周目のゴール地点通過時の速度制限、バンク角度制限、2010年まで採用されていたナイフエッジ飛行、そして9.9Gまで制限された垂直ターンなどが含まれます。
ランキング機能もあるので、腕に自信のある方はぜひチャレンジしてみてください。
超音速機Boom XB-1が登場
マッハ1超えの世界を体験
もう一つの大型追加コンテンツが、超音速デモ機「Boom XB-1」です。
Boom Supersonic社が開発した実験機で、超音速旅客機「Boom Overture」の開発プロジェクトの一環として製作された機体。MSFS2024を所有していれば、機体リストから無料で選択できます。
コンコルドに似た挙動特性
離陸時から電柱の視界はほぼゼロ。フラップレスで進入速度は170〜180ノットと高速着陸が要求される、コンコルドを彷彿とさせる挙動を持っています。
着陸の難易度は高めですが、音速を超える飛行が楽しめる貴重な機体として、高速機好きのユーザーには堪らない追加となりました。
キャリアモードの変更点
大型輸送ミッションは延期に
当初予定されていた大型輸送ミッションの追加は、残念ながら公開直前にキャンセルとなりました。
大型機でのフライトはお預けとなりましたが、代わりにA310やA320NEOといった新しい旅客機が購入可能になり、ミッションでの機体選択肢が広がりました。
大型輸送ミッションの実装を待ちながら、新機体に慣れておくのも良いかもしれません。
視覚面の改善も大幅に
夜間照明が自然な明るさに
SU3では夜でも異常に明るい場所が多数存在し、「明るすぎる」「非現実的」という批判が相次いでいました。
SU4ではユーザーフィードバックを反映し、照明の明るさを大幅に調整。以前と比べてかなり暗くなり、よりリアルな夜景が楽しめるようになりました。
また、高高度から地上まで自然な照明の移り変わりが実現され、突然明るくなったり暗くなったりする不自然な変化も解消されています。
雲の明るさ変化についてはまだ最適化の余地がありますが、これはSim Update 5以降で大幅な変更が計画されているとのことです。
日本語表示がついに実用レベルに
長らく問題となっていた日本語を含む2バイト文字の表示が、ようやく改善されました。
以前はEFBやUIで日本語を表示しようとすると文字化けが発生し、無線通信の選択肢が空欄になるなど、実質的にプレイ不可能な状態。PS5版のローンチ時には「日本のユーザーが来るのに大丈夫なのか」と心配されるレベルでした。
SU4では漢字もしっかり表示できるようになり、日本語環境でのプレイが快適になりました。日本を含むアジア圏ユーザーにとって、非常にありがたいアップデートです。
EFBの操作性が大幅向上
マップ追従機能がようやく正常に
Electronic Flight Bag(EFB)でマップを確認する際、これまで様々な問題がありました。
位置情報が狂っていてマップを確認するたびに位置調整が必要だったり、機体に追従させる設定をしても拡大すると外れてしまったり。非常にストレスの溜まる仕様でした。
SU4ではスポーン時に現在地がセットされ、拡大縮小しても追従が外れなくなりました。「当たり前」と思える機能がようやく実装され、やっとスタート地点に立てたという感じです。
70機体がアップデート
幅広い機体カテゴリーで改善
今回のアップデートで更新された機体数は、なんと70機。
Fenix、Working Title、ATRといったサードパーティ製機体から、デフォルトのヘリコプターEurocopterH135まで、バグ修正や改善が施されました。
Boeing 747では貨物用ドアが新たに開閉可能になり、787では3Dモデリングが改善されてリバリー(塗装)がグチャグチャになる現象が解消されています。
オレンジスクリーンの導入
SU4から、機体を動かすコア(WebAssembly)にエラーが発生した場合、オレンジ色の警告画面が表示されるようになりました。
ブルースクリーンならぬ「オレンジスクリーン」です。この表示が出たら、素直にフライトをやり直しましょう。
マルチプレイ環境の最適化
デグラデーションモデル機能を追加
大きな空港にスポーンすると、大量のプレイヤー機体が表示されてFPSが急激に低下する。そんな経験をしたことがある方も多いでしょう。
SU4では、この問題に対する新しい設定「デグラデーションモデル」が追加されました。
これは、PMDG 777やFenix A350のようなコックピット内部まで精密に再現された重い他プレイヤー機体を、MSFS2024に収録されている軽量なモデルに差し替えることでFPSを向上させる機能です。
設定は簡易とフィデリティの2種類
FPSが低下気味であれば「簡易」に変更してフライトをリスタートすると、軽量モデルに差し替わります。
パフォーマンスに問題がなければ「フィデリティ」に設定して、他プレイヤーの機体を本来の姿で表示させることも可能です。
プレイヤーが多い人気空港では、この設定が大いに役立つはずです。
空港・景色の全面最適化
SU4では、すべての空港と景色に対して衝突判定の追加やパフォーマンス最適化が実施されました。
公式のリリースノートを確認したところ、膨大な量の更新が含まれていたため、ここでは詳細は省略します。気になる方は、以下の公式リンクから確認してみてください。
SU4リリースノート(英語) https://forums.flightsimulator.com/t/release-notes-microsoft-flight-simulator-2024-sim-update-4-1-6-32-0-available-now/749383
空港更新リスト https://forums.flightsimulator.com/t/sim-update-4-bespoke-airports-and-scenery-updates/749770
マーケットプレイスが自動化
アップデート配信が迅速に
これまでマーケットプレイスは、システムアップデートがあってもアドオンの更新が遅く、ユーザーから不満の声が上がっていました。
MSFS2024では、マーケットプレイスのシステムが完全自動化され、アドオン用アップデートの承認プロセスが迅速化されます。
これにより更新が早くなるメリットがある一方、アドオンのバージョン管理が雑になる可能性もあります。ただ、総合的に見ればマーケットプレイスでのアドオン購入がしやすくなったと言えるでしょう。
今後のアップデート予定
Sim Update 5は2026年予定
MSFS2024については、2026年にSim Update 5が計画されています。
このアップデートでは、雲の挙動を含む気象シミュレーションの改善、そしてサードパーティ開発者向けのアビオニクスフレームワーク拡張が予定されています。
MSFS2020もサポート継続
MSFS2020は来年もサポートが継続され、2026年中頃に1回、システムアップデートが実施される予定です。
旧作ユーザーも引き続きサポートを受けられるのは安心材料ですね。
ストレンジャー・シングスコラボが配信開始
Netflixドラマとの異色コラボ
Netflixの人気SFホラードラマ「ストレンジャー・シングス」とのコラボコンテンツがリリースされました。
1980年代の田舎町を舞台に、少年少女とその家族が怪異や陰謀に立ち向かうというストーリーのドラマです。
注目は高品質なヘリコプター
ドラマ本編はさておき、注目すべきは追加される機体の方。
なんと、ヘリコプターの挙動に定評のある「Hype Performance Group」が開発に関わっています。ゲーム起動時の画面にもHype Performance Groupのロゴが表示されており、新たにパートナーシップを結んだことが分かります。
このコラボDLCによって、挙動の良いHuey(ヒューイ)ヘリコプターが無料で手に入ります。開発元からのクリスマスプレゼントとも言える嬉しい追加です。
ヘリコプター好きの方は、ぜひダウンロードしてみてください。
まとめ:MSFS2024はついに「買い」になった
パフォーマンス改善で別次元の快適さ
Sim Update 4は、MSFS2024にとって大きな転換点となるアップデートでした。
前回のSU3で悪化したパフォーマンスが劇的に改善され、特に着陸時のカクつきがほぼ解消されたのは大きな前進です。+20FPS以上の向上は、数字以上に体感できる変化として実感できました。
新コンテンツも充実
レッドブルエアレースという新しい遊び方の追加、超音速機Boom XB-1の実装、そして長らく問題だった日本語表示の改善。パフォーマンス改善だけでなく、コンテンツ面でも充実したアップデートとなりました。
日本の千葉・幕張でレッドブルエアレースを体験できるのは、日本のユーザーにとって特別な意味があります。
サードパーティツールの対応も進む
個人的に嬉しかったのは、Microsoft Flight Simulatorのランチャーソフト「FSUIPC」が正式にMSFS2024に対応したこと。
使いにくいツールバーを表示する必要がなくなり、シムが安定して動作するようになりました。特に着陸前のカクつきには本当に悩まされてきたので、良い改善になったと感じています。
ようやく「買い」と言えるレベルに
「もうMSFS2024に移行しても良いか?」という質問が、アップデートのたびに寄せられていました。
今回のSim Update 4で、ようやく自信を持って「もう入っても良い」と言えるレベルに到達したと思います。導入のための障壁は、個人的にはなくなったと考えています。
MSFS2024は、ここからがスタート。まだ改善が必要な機体や機能はありますが、1年かけてようやくスタート地点に立ったという感覚です。
今後のSim Update 5での気象シミュレーション改善、そしてMSFS2020の継続サポートと、マイクロソフトとAsoboスタジオの取り組みに期待が高まります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
