フライトシミュレーターを始めたいけれど、どの機材を選べばいいか迷っていませんか。
高価な上級者向け製品に手を出すのは勇気がいるし、かといって安すぎる製品では満足できるか不安。そんな悩みを抱える方にとって、今回紹介するスラストマスター T.16000M FCS Flight Packは理想的な選択肢かもしれません。
この製品は、スティック・スロットル・ラダーペダルの3点セットでありながら、エントリーモデルとして手の届きやすい価格設定が魅力です。さらにスティック単体でも基本的な飛行操作が完結できる設計となっており、予算に応じて段階的に環境を整えられる柔軟性も備えています。
本記事では、実際に購入して使用した経験をもとに、この製品の特徴や使用感、他製品との比較、そして気になる点まで詳しくレビューしていきます。
ぜひ最後までご覧ください。
スラストマスター T.16000M FCS Flight Packとは

製品概要と価格設定
スラストマスター T.16000M FCS Flight Packは、フライトシム入門者向けに設計された3点セット製品です。
通常のAmazon価格は37,800円ですが、現在は品薄状態が続いているようです。今回は中古品を約30,000円で購入しました。3点セットの在庫が少ない状況ですが、各機材は単体でも販売されています。
単体購入の場合、スティックが11,500円、スロットルが17,659円となっています。ラダーペダルについては単体で32,300円と高めの価格設定ですが、これはメーカーの供給がストップしていることが影響していると考えられます。公式サイトでは14,800円で販売されているので、通常時はもっと手頃な価格で入手できるはずです。
入門者向けである理由
この製品が入門者向けとされる最大の理由は価格です。
国内で入手可能な主要フライトシム機材と比較すると、その優位性が明確になります。主な競合製品としては、ロジクール X56、スラストマスター HOTAS Warthog(A10レプリカ)、ホリ HOTAS Flight Control System & Mount for PCなどが挙げられますが、スティック・スロットル・ラダーペダルの3点が含まれているにもかかわらず、T.16000M FCS Flight Packは最も価格が抑えられています。
さらに注目すべきは、スティック単体でも十分な機能を持っている点です。1万円ちょっとで購入できるスティックだけでも飛行機の基本操作が可能なため、まずはスティックのみを購入し、慣れてきたらスロットルを追加購入して環境をアップグレードするという柔軟な導入が可能です。
予算に制約がある方でも段階的にフライトシム環境を整えられる、これが入門機材として優れている大きなポイントでしょう。
他製品との比較
入門者向けとはいえ、上位製品と比較すると機能面では劣る部分があります。
最もわかりやすい違いはスロットルの軸数です。T.16000Mシリーズは単発エンジン用の設計ですが、他の製品では双発エンジンの操作が可能になっています。また、ボタン数についても他製品と比べると少なめです。
Microsoft Flight Simulatorで遊覧飛行を楽しむ程度であれば問題ありませんが、War ThunderやDCSといった戦闘機シミュレーションをプレイする場合、ボタンや機能の少なさが制約になる可能性があります。複雑な武装管理や細かい機体操作が求められるゲームでは、物足りなさを感じるかもしれません。
ただし、これはあくまで入門モデルに位置付けられる製品であることを考えれば、想定内のトレードオフと言えます。
スティックの詳細レビュー

基本機能とボタン配置
スティック部分の機能を詳しく見ていきましょう。
スティックを倒すことでX軸・Y軸の操作、人差し指でトリガー、親指で3つのボタンとハットスイッチを操作します。スティックをひねることでZ軸(ラダー)操作も可能です。
台座部分には左右に6つずつ、合計12個のスイッチと、スライダーが1つ配置されています。付属のグリップパーツを使用すれば、スティックを左手用に最適化することも可能です。この左右両対応の設計が、後述する柔軟な運用方法を実現しています。
ロジクール X56との比較
以前紹介したロジクール X56のスティックと比較してみます。
X56は戦闘機の操作系を意識したデザインで、スティックとスロットルがセット販売されている製品です。明らかにスティックに搭載されているボタン数が違います。X56は右手での使用が前提となっており、側面にもボタンが配置されているため、より多くの機能を右手だけで操作できます。
一方、T.16000Mは左右どちらの手でも使用できる設計のため、側面にボタンを配置できません。左右対称に作る必要があることから、ボタン数はX56と比べて少なくなっています。
ただし、T.16000Mには台座部分に12個のボタンとスライダーが装備されています。これはスティックのみでも飛行機を飛ばせるよう設計されているためです。スライダー部分でスロットルを操作し、12個のボタンでギアやフラップを操作することで、スティック1つで飛行機の基本的な操作が完結します。
つまり、スロットルやラダーペダルがなくても、このスティックさえあれば飛行機が飛ばせるわけです。満足できなくなったら後からスロットルを追加購入して環境をアップグレードできる、これがこの製品の大きな強みでしょう。
スロットルの詳細レビュー

デザインと機能性
スロットルは単発エンジン用ですが、FA-18戦闘機のスロットルを意識したデザインになっています。
細部は異なりますが、ボタン配置がFA-18のスロットルに近いレイアウトです。機能面を見ていくと、前後でのスロットル操作が基本となり、側面にはハットスイッチが3つと、一番下にオレンジ色のボタンが配置されています。
裏面には人差し指で操作できるXY軸(視点移動などに使用)と押し込みボタン、中指で上下操作するトグルスイッチ、そしてオレンジ色のボタンが3つあります。その下にあるレバーはアナログ軸になっており、さらにダイヤルも搭載されています。このダイヤルは無限には回らず、アナログ軸として機能します。
スロットルの重さは裏側のネジで調整可能です。好みの操作感に設定できるのは嬉しいポイントでしょう。
X56スロットルとの使用感比較
再びX56との比較になりますが、スロットルもスティック同様、ボタン数では圧倒的にX56の方が多くなっています。
ただし、個人的にはT.16000Mのスロットルの方がシンプルで使いやすいと感じました。X56はボタン数が多い反面、ボタン配置的に少し押しづらいボタンがあるんです。
対してT.16000Mは、FA-18戦闘機のレイアウトに近いボタン配置がされており、無理なくすべてのボタン操作が可能でした。実機のレイアウトを参考にしているだけあって、手の動きが自然で疲れにくい印象です。
ただし、やはりスロットルの台座部分にボタンが一切ついていないのは残念なポイントです。その分スティック側の台座部分にボタンがありますが、ギアやフラップをそこに割り当てると、左手を一度スティックに持っていく必要があり、少し手間に感じる場面もあります。
ボタン数が少ないため、戦闘機シムなど素早い機体操作が求められるゲームでは、スペック不足を感じる可能性があります。
ラダーペダルの詳細レビュー

基本機能と接続方法
ラダーペダルは足を前後させることでラダー軸を操作し、ペダルを踏み込むことで左右のブレーキ軸操作が可能です。
注目すべきは接続端子です。USBではなく、RJ12という特殊なコネクターを採用しています。PCへの接続はスロットルを経由する形になります。スロットルにRJ12用のコネクターが用意されているので、そこに接続してスロットル経由でPCに繋ぎます。
ラダーペダル単体製品の場合は、RJ12からUSBに変換するアダプターが付属しており、直接PCに接続できるそうです。しかしFCS Flight Packの3点セットでは、このアダプターは付属していません。
つまり、3点セットで購入した場合、ラダーペダルを使用するにはスロットルを必ず間に挟む必要があります。スロットル経由でPCに接続した際は、ラダーペダルとしては認識されず、スロットルの軸として扱われる点も覚えておきましょう。
設計上の特徴と注意点
この製品の特徴として、左右の間隔が狭いという点が挙げられます。
映像を見るとわかりますが、内股を閉じてラダー操作を行う形になります。左右の間隔が狭いと、センタースティック(床置きのスティック)が内股に当たる可能性があるため、センタースティック環境の方にはこの製品は向かないかもしれません。
固定についてですが、一応滑り止めが裏面についているので簡単に動いたりはしません。しかし、より確実に固定したい場合、ネジ穴が用意されていないのは残念なポイントです。スロットルやスティックにはネジ穴が用意されているのに、ラダーペダルにはないんです。
ちなみに純正のクランプ式固定具も販売されています。スラストマスター TM Flying Clamp(純正固定具)を使えば、机に取り付けることが可能です。また、純正でなくてもHowhite 汎用固定具といった汎用品でも取り付けられます。ただし、汎用品では固定用のネジが4本ほど追加で必要になる場合があるので注意してください。
実際の使用感とゲーム対応
Microsoft Flight Simulatorでの動作
実際にゲームで使用してみた感想をお伝えします。
Microsoft Flight Simulatorでは、デフォルトである程度キーバインドがされていますが、使いづらい部分があったため設定し直しました。スティック軸の動作は問題なく、スティックをひねってラダー操作、ラダーペダルでもラダー操作が可能です。
スロットルに割り当てたスピードブレーキスイッチも正常に機能します。離陸時はスロットルを前進させ、スティックをひねってラダー操作を行います。速度が上がったら徐々にスティックを引いて離陸。車輪が浮いたのを確認したら、スティック台座のボタンでギアを格納します。
上空で機動を試してみましたが、特にスティックが引っかかったり遅延したりすることもなく、思い通りに飛ばせました。視点移動はスロットル裏側のXY軸で操作しており、これも快適に使えています。
スティックのみで機体操作を行ってみた映像も撮影しました。スティックだけでも、普段のショート動画を作成できる程度の機能は十分に備わっています。一気にスロットルまで揃えるお金はないけれど、フライトシムの操作感を味わいたいという方にとって、初めの一歩としてこのスティックはかなり優秀だと感じました。
その他のゲームでの互換性
Microsoft Flight Simulator以外のゲームでも試してみました。
飛行機ゲームといえばエースコンバット。PC版で試したところ、特に設定などは必要なく、挿しただけで動作しました。映像では今回のスティック、スロットル、ラダーをすべて接続していますが、スティックだけ接続しても問題なく動作します。
スティックのみ接続した場合は、Microsoft Flight Simulatorのときと同じように、台座のスライダーでスロットル操作を行う形になります。
PCゲームだけでなく、PS4でも使用可能です。War Thunderで試してみたところ、キーバインドはされていないため全部自分で設定する必要がありますが、問題なくスロットル、スティック、ラダーペダルすべてが認識されています。
今回は基本的なピッチ、ロール、スロットル、ラダーのみを割り当てて簡単に飛んでみましたが、わりと思い通りに機体を動かせました。武装面のテストは行っていませんが、そちらに関しても問題なく割り当てられるでしょう。
総合評価とおすすめの使い方

各機材の評価まとめ
ここまでの内容を整理してみましょう。
スティックについて
やはりスティック単体で飛行機の基本的な操縦を完結できるのが最大の強みです。しかもそのスティックが単体で1万円ちょっとで販売されているコスパの良さも魅力的でしょう。
弱みを挙げるとすれば、スティック部分のボタンの少なさです。War ThunderやDCSなど、飛行機を飛ばしながら武装管理などを行うゲームでは少し物足りなく感じるかもしれません。ただし、1万円というコスパを誇る入門モデルの製品にこれを求めるのは、少し違うかなとも思います。
スロットルについて
ボタン配置が最適化されており、個人的にはX56のスロットルより使いやすく感じました。
しかしながら、スロットルの台座部分にボタンが一切ついていないのは残念なポイントです。その分スティック側の台座部分にボタンがありますが、そこにギアやフラップを割り当てると、左手をスティックに持っていかないといけないのが少し手間でした。まあこれは好みの部分もあるかと思うので、それほど重要ではないかもしれません。
ラダーペダルについて
ラダーペダルの機能としては満足していますが、やはり気になる点はコネクターです。
USBではなくRJ12という特殊なコネクターで、3点セットの場合はスロットルを必ず間に挟む必要があります。3点セットで購入して、後々スロットルをもっと良いものに更新した場合、ラダーペダルを使うために使わないスロットルを置くスペースを用意する必要が出てきます。
実際、今回この3点セットを購入した理由の半分以上はラダーペダルが目的でした。スロットルについては引き続きX56のものを使用しようと考えていましたが、3点セットではUSBの変換アダプターが付属しないため、環境をどうするか少し悩んでいるところです。
それから、ラダーペダルに固定用のネジ穴が用意されていない点と、ペダル間の間隔が狭く内股でラダー操作を行う必要がある点も、ちょっとした残念ポイントでしょう。
おすすめの購入プラン
これらの評価を踏まえて、おすすめの購入方法をまとめます。
| 購入パターン | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| スティックのみ | ★★★★★ | 1万円で基本操作が完結。買って失敗はない |
| 3点セット | ★★★☆☆ | コスパは良いがラダーペダルの拡張性に難あり |
| スティック→スロットル追加 | ★★★★☆ | 段階的な投資で予算に優しい |
フライトシム入門モデルとしては確実におすすめできます。スティックだけでも十分飛行機は飛ばせます。ただし、戦闘シム用としては少し物足りないかもしれません。ラダーペダルは拡張性が低く、今後のことを考えるとおすすめできない部分もあります。
私の考えとしては、まずスティックだけ購入して、満足できなくなったら追加でスロットルを購入するのが良いでしょう。あるいは、ロジクール X56やホリ HOTAS Flight Control System & Mount for PCといったスティックとスロットルのセット製品を購入して、今までのT.16000Mスティックは左手用に転用し、優先度の低いスイッチを割り当てて飛行機操作の補助として使うという方法もあります。
少なくともスティックについては、買って失敗ということはないと思います。
まとめ
スラストマスター T.16000M FCS Flight Packは、フライトシム入門者にとって理想的な選択肢です。
スティック単体で基本操作が完結できる設計、手頃な価格設定、段階的なアップグレードの柔軟性など、初めてフライトシム機材を購入する方に優しい製品と言えます。特にスティックのコストパフォーマンスは素晴らしく、1万円程度の投資でフライトシムの世界に足を踏み入れられるのは大きな魅力でしょう。
一方で、ボタン数の少なさや戦闘シム向けの機能不足、ラダーペダルの拡張性の低さなど、上級者向けとしては物足りない部分もあります。しかし、これらはあくまで入門モデルとしての位置付けを考えれば、許容範囲内のトレードオフです。
Microsoft Flight Simulatorでの遊覧飛行やエースコンバットでのカジュアルなプレイには十分すぎる性能を持っています。PS4にも対応しているため、PCを持っていない方でも楽しめるのも嬉しいポイントです。
フライトシムに興味はあるけれど機材選びで迷っている方、まずは低予算で始めたい方、将来的に環境をアップグレードしたい方には、特におすすめできる製品です。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
